わたしのキャラメル王子様・番外編







帰宅してひとり。
部屋であの映像を見返していた。



それは、はじめ1枚の写真みたいな景色で、セピア色の雨が降るビル郡の空を映してた。



遠くにある工場地帯の煙突から、色のない煙の筋が何本もゆっくり流れていく。



高層ビルのてっぺんの、さらに上空。



空を飛ぶ鳥の視点みたいに
随分高く遠くから、カメラが黒い影を捉えた。



その影の正体は、寄り添うように隣り合っている広い背中と小さな背中。



ビルの屋上のふちに腰掛けて
ふたりとも足はぶらりと投げ出している。



雨が止む気配はない。



目を閉じた子供の顔がアップになり、雨なのか涙なのかわからないものが、陶器のように滑らかな頬を次々伝っていく。



その横に座る誰かの指が
そっとそれを拭った。



長くしなやかな腕が子供の華奢な肩を抱いていて、胸に引き寄せる大きな手がアップになる。



小さな背中は大きな背中にすっぽり重なってしまい、彼が子供の顔を覗き込む横顔を、カメラは後ろからのアングルで捉えた。

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