わたしのキャラメル王子様・番外編

悠君に引っ張られて会場を出たら、外は冷凍庫みたいに冷たかった。



でも、当麻君とお客さんの熱気に当てられてのぼせそうだったから、今はそれが気持ちいい。



風がないおかげでゆっくり舞い降りた粉雪が、いつの間にか辺りをうっすらと覆いはじめていた。



これから積もるかな。
ホワイトクリスマスになるかもしれない。



私たちは混雑を避けようと会場から次々出てくるみんなの流れから逸れると、自然と歩調をゆるめた。



「さっき……連れ出してくれたんだよね」



「そんな大袈裟。女子ばっかで俺浮いてるみたいだったからさ」



悠君のお陰で足も全然疲れなかったし身体もポカポカだった。



「お店予約してくれてたんだね、驚かせるなんて悠君ずるいよ。でも、嬉しかった。ありがと」



悠君が優しすぎるから、びっくりするくらい素直にそう言えた。



「えっ、あぁうん。こちらこそ素敵な催し物にお招き頂いて……どうもです」



「催し物って!」



ダメだ、やっぱり笑っちゃう。



「俺まだ日本語の感覚あんまり取り戻せてないかも」



私が吹き出すと、悠君は照れて苦笑した。



「ほんとにすごく嬉しかった、付いてきてくれたこともサプライズもなにもかも。でもね」



こんなにしあわせなのに、ふと胸の内に暗雲が迫る。



「……でも?」



「どうしよう……京ちゃんへのお土産が銀テープ一枚しかないのっ!」



銀テープっていうのは天井から演出物として降ってくるキラキラのテープのこと。



悠君はきっとグッズなんか買う余裕はなかったはず。
銀テープだけじゃ、弱ってる京ちゃんを元気づける自信がなくて、実はさっきから悩んでいたのだった。

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