わたしのキャラメル王子様・番外編
「なんで起こしてくれなかったの?私今まで京ちゃんと一緒にいたんだよ」
エプロンを付けながら、
なんとなくを装って口火を切った。
「だって二度寝したのはそっちじゃん。寝顔可愛いんだもん、起こせないよ」
「なっ、に言って……」
おろおろしちゃだめ。
何か言わないと!
悠君のペースに持ってかれる展開だぞこれ。
「ほらもー、袖ちゃんとまくんなって」
悠君が後ろからふわっと覆い被さってきて、濡れそうな袖口を片方ずつくるくるしてくれた。
「エプロンの結び目が蝶々じゃなくてダルマになってるし」
そっちも甲斐甲斐しく直してくれて……。
「沙羅は変なとこが抜けてんだよなぁ。はい、これでいいね」
とどめに頭ぽんぽんなんて。
腑抜けになっちゃうじゃん。
それなのに、私のドキドキになんかちっとも気づかないで、あっけなく隣へ戻ってしまった。
パプリカを切るのにそんなに必死にならなくても。
ドキドキさせられるのは、いっつも私ばっかりだ。それがちょっと悔しい。
同時に不安になる。
正直こわい。
誰かに悠君を取られそうな気がして、昨日からずっと胸の奥がざわざわしてる。
当麻君のMVになんか、絶対出ないでほしい。