暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
「最近忙しいご様子でしたので……」
休む暇があるのかとたまに少し不安になる。
私がメイドのときも、色んなところを走り回り、やっと一息ついたとしても執務室で少し休む程度。
疲労が溜まってるのではないか?いつか倒れてしまうのではないか?
………………無理やりつれて来られた身だけど、使えていた主人なので、
やはりそういった事を気にしてしまう。
「失礼ながらアニ様は陛下の事を心の中では良く思っていないものだと思っておりました」
「…………いえ、そんな」
仮に嫌だったとしても、そんな軽々しく側近の人に『陛下のこと苦手です』なんて言えないよ………。
バレた時点で反逆罪か、皇室冒涜罪で死刑になるのが見えている。
「アニ様がどこから来られ、どのようにして陛下とお知り合いになられたのか、私には存じませんが___……」
続きを言いかけて、宰相様は私をなめ回すように見る。
「私は貴女と出会ったことで、陛下自身変わられる事を勝手ながら願っております」
「…………私にはなんの"力"もございませんよ?」
「いえ。自覚なされていないようですが、陛下は少しずつ変わろうとしています」
陛下が……………………………変わろうとしている?
そんな事あるのだろうか。
私を無理やり連れてきて、所有物のようにこの宮殿に置いている陛下が。
人の命を何とも思っていないような……………………あの陛下が変わろうとしているなど。