暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
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「……………ん…っ……あれ?」
朝、目が覚めると私は客室のベッドの上にいた。
馬車の中に乗り込んだのまでは覚えているけど、それからの記憶が見事に全くなく、
私を起こしに来たサニーがカーテンまとめ、部屋の中には朝の日差しが差し込んでいた。
「おはようございます!良く眠れましたか?」
「……うん。良くは眠れたんだけど………」
起きたばかりで中々回らない頭を頑張って回転させようとしたが、
一向に思い出せない。
布団の中でボーッとしている私にサニーが笑いながら話しかけてきた。
「昨日はビックリしましたよ。眠ったまま寝室まで運びこられたので」
「え?」
「馬車の中で眠ってしまわれたようでして、陛下は起こさずにそのまま近くにいた使用人にアニ様を託したそうですよ」
つまり、あの後記憶がなかったのは眠ってしまったからで、
私はあろうことか陛下の前で爆睡してしまってたのか!!!
……………………………普通なら確実に死刑だよ。
でも、なっていないと言うことは許してくださったと言うことだよね?
出なきゃ生きていないし、そもそも起こされてるはず。
「陛下の前で眠られてしまったことに関しては私(わたくし)も驚いておりますが、何より"あの"陛下の前で寝れたということは少なからず安心されていたからでしょう?」
「安心……?」
「はい。本来陛下の前では気が抜けません。それは使用人だけでなく、招かれた他国の者や貴族の方も一緒でした。それに少なからず相手に気を許していないと眠る事などできないでしょう?……使用人の分際で偉そうな事を申します事をお許しくださいませ」
………仮に私が使用人の際に何かしらの用事で陛下と同じく馬車に乗り合わせたとしよう。
普通に考えて私は眠ることは確かに出来ない。
それは陛下の前だからと言うこともあるし、親しい間柄でもない相手に寝顔を見せてしまうこと自体恥ずかしい事だから。
そう思うと私は、少なからず陛下に心を許してきているのかもしれない………………。