暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】



「アニーナ!!無事に帰ってきたのね!?」


家に顔を出すとまず母が涙ながらにお出迎えしてくれた。

「お母さん私なら大丈夫よ。宮殿だったら無闇に手は出せないと言ったのはお母さんでしょう?」


母はいつも私の心配をしてくれる。こまめに顔を出しているつもりでも、仕事が忙しく中々会えない日が続くことも多い。その度に母は私の身を案じる。


「エレナとグラントは2階の自室にいるわ。挨拶してきなさい」

エレナとは今年成人を迎える2個上の姉の名前で、グラントは5つ下の弟の名前。


2人に会うのも半年以来だ。


____ガチャ。


「グラント?もう、ノックぐらいしてよねぇ~……………」

机に向かい何やら本を読んでいるエレナは、アニーナの存在に気づかない。


弟のグラントと勘違いしている様子だ。


「エレナお姉ちゃん」


アニーナがそう一言かけるとやっと本から目を逸らし、驚いた様子ではあるが私の方を振り向いてくれた。


「アニ!?いつの間に帰っていたの!!」

姉弟は私の事を親しみを込めて、『アニ』と呼ぶ。

「さっき帰ってきたの。元気そうだね!」


私とは真逆に、姉は整った顔立ちをしておりこの里きっての美少女。隣町の有名な大学にも通う自慢の姉だ。


「姉貴うるさい…………………って、アニ姉!!」


怠そうにエレナお姉ちゃんの部屋に入ってきたのは、グラントだった。

半年も見ないうちに逞しくなっていて、こちらが驚いた。


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