暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
この長年と繰り返される王座争いを目のあたりにし、大切なものを一度は失い、それでも王座についているリードに
冷えきった心ではなく暖かい心を与えれるのは、アニさんだと思っているからこそ、
罰は免れたい。
ここで罰せられてしまえば再び冷えきった王に戻ってしまう気がする。
俺が必死に説得をしようとしているのに、対するリードは『分からぬ』と言ったような顔。
『いや、分からぬじゃねーよ!』って、言ってやりたい気持ちをグッと押さえ込む。
「変な事を言うものだな」
「……俺は罰するのだけは反対だ」
「何を思ってそのような事を言っているのか分からぬが、確かに余はどうでも良い女と他国のパーティーなど参加せぬ。この宮殿に連れてきた時点で気持ちが無いとは言い切れぬかもしれぬな」
意外な言葉に正直驚いた。
普通のリードなら絶対に言わないようなセリフだ。
「会ったときから非常に面白い奴であった。余の誘いを断り、誰もが羨む宮殿に入れたというのに浮かない表情をする。それだけでなく、町の子供を守ろうと商人に立ち向かうなんぞ、非常に驚くことばかりだ」
普段あまり笑わないリードが少し笑っているように見えた。
「それに案外博識なのだ。マテオ・マテラの職人が宮殿へ訪れた時のことを覚えているか?」
「………あぁ。ワイングラスで有名なあの方がリードの為に、ワイングラスをプレゼントした時のことだろう?もう何年か前になるが……それがどうした?」