暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
それよりも怒っていらっしゃらない事に、とても安心した……。どうなるかと思ったよ。
「早とちりしてしまい失礼致しました。ご用は済んだので私はこれで失礼致します」
既に用事は済んだし、ここにいる必要もない。
心配をかけた使用人の元へ戻るとしよう。
私は陛下の前で軽くお辞儀をし、ドアの方へ振り向こうと足を一歩後ろへ引いたその時、
「待て」
陛下から引き止められ、動いていた足がその場で止まる。
そう言えば陛下は始めのときに、ちょうど私に伝えることがあると言っていた。
その時は陛下が怒ってらっしゃると思ったから、先に謝ろうとあんな事をしてしまったが
違うと知った今、陛下自ら私に伝える事とは一体何だろう…?
その場に妙な緊張感が走る。