暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
「……嫌か?」
……嫌に決まっている。
私は平凡に過ごしたいのだ。
こうやって陛下の客人としてここへいること自体凄いことなのに、更に妃だなんて………………ありえない。
それにどんな縁談でも断るという陛下は一体どんな心境でいらっしゃるのか。
不思議でたまらない。
「私が妃などにはなれませぬ……」
「ファンに良い妃になれるよう講師をつけてやる。安心せよ」
そうゆう問題じゃなくて…………私は普通の人。しかも、使用人だ。
知らないとはいえ、これ以上踏み込んではいけない気もするし、バレたあとに騙した罪に問われるのも嫌。
「勿体無いお言葉ですが、私にはやはりそのような事は出来ませぬ……。私は普通の身です。陛下の妃などなれませぬ」
私がどんなに断っても陛下は中々折れてくれない。
逆に余裕そうに感じる。
まるで私が断るのを初めから分かっていたように。
「………では、こうしよう」
「何でしょう?」
「そなたは余の前で寝てしまったことを罪だと言った。ならばその罪を償う代わりに、妃になれ。よい提案なろう?(笑)」
「え………っ!先程気にしてないと仰ってたじゃないですか!」
「気が変わった」
陛下は本当に酷い方だ…………。先程の気にしてないと言ったのに、こんな所で再び持ち出すなんて。
これじゃあ、従うしかないじゃないか!!!
「…………分かりました。従いましょう」
しかし妃となれば下手に手は出せない分、逆に安全なのかもしれない…。
そう考えればメリットもあるのかも。
私は覚悟を決めて、妃になる事にした。
だが、この選択がまさかあんな事に繋がるとは、この時思っても見なかった_______。