暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
………………とまぁ、取りあえず今は陛下との演技に集中しよう。
「また後で来るがゆえ、心して待っておくが良い」
「はい。その時は陛下の"お好きなもの"をご用意し、お待ちしております」
本当の事を言うと、陛下の好きなものなどあまりよく理解はしてはいないのだが……。
陛下が去っていくと、周りの使用人たちが毎回騒ぎ始める。
「愛されてますね!」
「今じゃ多数寄せられる縁談を、『妃しか目に入っておらぬ』の一点張りで断るそうです!」
「陛下の寵愛をお受けになられるのは、この国でただ1人、お妃様だけでございます!」
…………陛下の思うツボだなぁ。
皆は私達の完璧な夫婦の演技に騙されている。
というか陛下の寵愛する演技が上手すぎるのよ…………恥ずかしいセリフがほんと、スラスラと……。
嘘だと分かってても照れてしまう。