暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】



使用人専用の寮から宮殿へと戻る最中、ダリアが恐る恐るある事を口に出した。


「お妃様……。とても申しにくいのですが、リリアンの件で少し…………」


「リリアンがどうかしたの?」


「実は先日リリアンの事を良く知るメイドから聞いたのですが、リリアンの家は結構複雑で、呼び出しがあった日からあのように部屋へ引きこもるようになってしまったところを見ると、それが原因かと………」


「つまり体調不良ではないと言うのですか?」


「……………恐らくですが」


具合が悪くない事に関しては安心した。


しかし、心の問題となると中々難しい…………。



そう言えば前の時にリリアンはあんな事を言っていた。


『私が妃になれば父も母も、そして兄たちも認めてくれるし、きっと喜んでくれる。そう思って、宮殿に入った』のだと。


確かにこの言葉には少し引っかかるとこがあった。


父も母も、兄達も"認めてくれる"。


その認めてくれるとは一体何だろうって思っていた。


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