暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
『リリアン。一度家に帰ってきなさい』
アニ様が妃になった途端送られてきた父からの手紙。
今まで一度も私に手紙をくれた事がない父が、私にわざわざ書いてくれた事に、不思議さと嬉しさを感じつつ、
メイド長様に許可を貰い、実家に帰ることとなったが、
それが問題だった。
初めから罠だと、策略だと言うことを考えて置くべきだった。
私はあの家では道具だ。
才能のない者は、その者の利益になるよう勝手に価値を生み出される。
私は_________
「急に現れたどこぞと知れぬ娘が妃なったそうだな。しかもお前が仕えている方だそうだね?」
「使用人にも決して横暴な態度は取らない、とても優しくて慈悲深い素晴らしいお方です」
「そのような社交辞令は良い」
「社交辞令なんかじゃ……!」
「名門でなければ国の恥だ。陛下自身の評価の為にも、妃は他の者でなくてはならぬのだよ。つまり、何が言いたいのか分かるかい?」
お父様はそう言って不気味にニヤリと笑った。
「そのような者が妃になるぐらいなら、お前が妃になるのだ」