暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】


だけど、お父様が発した言葉はどんな言葉よりも恐ろしくて、尚かつ私に誘惑をするようだった。



「妃を殺して偽造すれば良いのだ」


「お父様………っ!何て言葉を…………」


「他の者から殺されたように偽造し、妃を消す。そして、お前は妃を殺した偽犯人を捕らえ陛下に差し出すのだ。すると陛下はお前に褒美を与えるだろう。そこでは欲ははらず、あくまでも陛下のお役に立ちたかったと言えばいい。


それだけで目に止まる」


お妃様を………………殺すなど私には出来ない…!


「悪い話ではない。殺しさえ出来れば後は私が何とかしてやろう。……お前は妃になれる。このシェパード家にもお前が『必要』だという時が来たのだ」


「私が……………必要?」


「あぁ。今じゃお前なしにこんな事は出来ない。お前だけなんだ。出来るのは」


切り取ったようないいセリフだけが私の頭の中で何度も再生される。


ずっと邪魔者にされてきた私が役に立てる。


偽造すればいい。誰も私だとは気づかない。


でも、相手はアニ様………………………どうしたらいいの……?




< 166 / 224 >

この作品をシェア

pagetop