暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
アニ様…………いえ、お妃様は、私に暖かいお言葉をかけて下さる方で他の者なら馬鹿にするような話も、笑顔で受け止めてくれた方。
私がこうして実家から戻ってきた途端、部屋に引きこもっている状態に関しても、気にかけてわざわざこんな場所までおこし下さった………。
会うことを拒んた私に気にもせず、回復したらまた私の笑顔を見せて欲しいなどのお言葉を下さるお妃様に、
私はますます混乱する。
無理だ。私には出来ない。
例え必要だと言われようとも私はしたくない……!!
でも、認めて貰いたい。
本当は学校に行きたかった。
才能さえあれば何恥じない自慢の娘になりたかった………。
ここには何の為に入ったの?
認めてもらう為でしょう?
迷うな……………………己の要望を果たせるときが来たのよ。
天使と悪魔が私の中で囁く。
覚悟なんてできないまま時間だけが過ぎていき、それに痺れを切らしたお父様が私宛てに毒入りのチョコを送ってきた。
『リリアン。見た目こそは高級チョコレートその物だが、微量でありならがら死にいたしめるという猛毒のチョコレートだ。食べて直ぐ効果が現れることはなく、時間差で効果が現れる性質になっているので、お前が疑われる可能性は少ない。これを使いなさい。もしお前が出来なければ、宮殿に忍ばせた密偵に殺らせる』
添えられた手紙にはそう書かれてあった。
______密偵…………。
毒なんて入っていないかのような美味しそうなチョコレート。
まるでお父様は私へ『これはお前に与える最後のチャンスだ』と言っているよう。
私がしなければ、その密偵がやる。