暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
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長い……とても長い夢を見ていた。
メイドの格好で陛下を遠くから眺めている夢で、
その陛下の隣にはきらびやかに着飾った女性が陛下を見つめ幸せそうに笑っている。
陛下も愛おしそうにその女性を見つめ、そっと肩を抱く。
私はただのメイドで、
相手はいつもの怖い暴君陛下のはずなのに、
いつもなら側にも行きたくなくて、他の者にコーヒーを運ばせるのに、
私は不思議なほどにちっとも怖く感じなかった。
『陛下。失礼致します。コーヒーをお持ち致しました』
らしくもなく自ら執務室へコーヒーを運んでも、
陛下はちっとも私を見ない。
無難に過ごせればそれで良かった。
妃なんてごめんだと思っていたのに。
『…………何でこんなに寂しいの』
サニーもリリアンもいない。
不器用で分かりづらいけど、たまに優しさを見せてくれる陛下もいない。
真っ暗だ………………。