暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
騒動を聞きつけたファン宰相が、資料を片手に執務室へやってきた。
「休暇だと?」
「はい。使用人への聞き取り調査や、上層部に出されていた書類から、3日間の外出届書と休暇届書が提出されていたことが分かりました」
報告書を見ながらこの短時間で分かったことを陛下に報告する。
「余にはそのような報告届いておらんのだが」
「後で提出するおつもりだったのでしょう。『このような事になるとは思っていなかった』と、メイド長から報告を受けた者が言っておりました」
いつものように私用を済ませてからでも遅くないと判断したのが少し悪かったようだ。
「報告しなかった管理官を降格させ、そこに新たな別の管理官を就かせよ」
偶々犯してしまったミス1つで、上り詰めた自職を降格なんて可哀想な話だ。
「御意。…………………………ところで、お飲物はどうなされますか?」
「その件はもう良い。飲む気が失せた」
資料から目を逸らさずにそう言うと、陛下は部屋にいた兵士や官僚たちに席を外すようにと命じた。