暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】

急に映像が消え、辺りが真っ暗で何も見えない。


ただ前と後ろの分からない状態に出口はどこかとキョロキョロしている。


『ここは…………』


何でこんなところに私はいるんだっけ？


確か変な手紙が届いて………それで……。


取りあえず凄く疲れたのは思い出せるが、それ以上をなぜか思い出すことができない。


『まぁ、いっか…』


次第に思い出すことすらやめて、適当に前へ歩き出した。


どれぐらい進んでいるのかも分からないが、


ただ何となく前へ。




『…………ア…………』


『………ア………ニ…………』


次第にどこからか声が聞こえてくるようになった。


『誰？』


宙に問いかけても、返事はなにも返ってこない。


『アニ……………』


どこか切なそうに、私の仮の名を呼ぶ声が聞こえてくる。

この声は聞いたことがある。


だけど、それが誰かさっぱり思い出せない。


まるで先程から記憶喪失にでもなってしまったかのようだ。


『起きろ………』


気づけばどこからか細い光が差し込んで来ているのに気づいた。



眩しいほどの細い光はどんどん眩しさを増して、一つの道へなっていく。



声の主が誰か分からない。

けれど、こんな暗いところにいるよりはだいぶマシ。


『よし…！』


私は覚悟を決めると、光の方へ歩き出した。