暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】




そう願った通りに日が過ぎるに連れ、周りは妃の話をしなくなった。


噂にも聞かなくなり、私の望んだいつもの日常が戻ってくる。


「あれ?バタークッキーじゃないんだ?」


コーヒーのお茶菓子用にいつも用意していたバタークッキーから変更されたのは、


「甘さ控えめなのに、とっても美味しいのよ」


パーティーのとき食べたカヌレを再現したものだった。


ココアパウダーなどで代用することにより、甘さを控え尚かつ美味しいお菓子を作ることが出来るのだ。


「じゃあ、このコーヒーを…………」


いつものように他の者にもトレーを渡そうと歩み寄る。


だが、



「最近陛下のご機嫌が宜しくないようで……今は行きたくありません……!」


「わ、私も……」


いつもなら喜んで届けにいく者たちが口を揃えて行きたくないと言うではないか。


「八つ当たりされても嫌だしねぇ〜」

ここ最近使用人の間では、陛下の機嫌が宜しくないと話されていた。


「………………仕方ない。私が行こう」


誰も行かないのであれば、私が行かねば仕方ない。


本当は行きたくないのだけれど……………。



だって____。


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