暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】




____コンコンコン。


久しぶり執務室のドアを叩く。



「誰だ?」


すると中から少し不機嫌気味な陛下の声が聞こえてきた。


どこか入るなとでも言っているかのような圧を感じるが、ここで下がるわけにはいかないし、そもそもコーヒーを届けに来たのだから、帰るわけにもいかない。



「使用人のアニーナでございます。コーヒーをお持ち致しました」

恐らく皆がここへ来たくないというのは、この謎の圧なのかもしれないが、


「………入れ」

「失礼致します」

これ以上に恐ろしい場面を私は沢山見てきたから割と平気だ。



中へ入ると沢山の資料に囲まれた席で忙しそうにする陛下がそこにはいた。


「こちらに置いておきます」

ソファーが向き合った形に並べられたその机の上に、コーヒーとカヌレを静かに置く。


一瞬チラッと位置を確認する程度に陛下はこちらへ視線を移したが、すぐに資料に目を戻してしまった。



……………やっぱりここへは来たくなかった。

なぜなら、辛さが増すから。



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