暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
そして、ファン宰相と2人きりになったところで本題に入る。
「この資料だが……南に位置する国境近くの町だな。そこで人身売買が行われてることは確かか?」
「はい。入国管理局の方から、国を出入りする怪しい輩がいたとの情報を得ました。南の国境を利用してるとこから恐らくイーズン国と何らかの関係があると思われます」
他国では奴隷などによる人身売買を許可しているかもしれないが、この国ではそれを禁止している。
その為、国に足を踏み入れた以上他国の者であってもそのような動きは決して見過ごせない。
「予定より少し早いが出発するぞ」
「御意」
本来陛下自ら動く必要はないが、たまにこうやって陛下自らその場所に足を運ぶときがある。
今回は恐らく国を荒らした奴らに、残酷な処分を与える為に行くのだろう。
前回陛下が宮殿から動かれた際は、勝利した戦地先で捕えた国王の処分を言い渡すときだった。
その処分とは陛下自らその国王の首を皆の前で切り落とすという、残酷なやり方だったそうな。
_____そして、昼過ぎ。
立派な黒い馬に乗った兵士10人と、陛下・官僚2名を各自それそれの馬車に乗せた視察隊は、南を目指して出発した。