暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
「ねぇ、聞いたー?」
主(あるじ)のコーヒーや官僚たちの飲み物などを用意する為の準備室で、私と同じ服装をし、後ろの方で髪をお団子に結んだ噂好きのメイド、アイル・レイガーが少しだけ休憩をしようと集まったメイドたちの元に駆け寄ってきた。
帰ってきた主の為、温かいコーヒーを煎れていた私も、当然その話を聞いていた。
「今月に入って、この宮殿でまた死者が出たらしいよー!」
(またか…………………)
その内容につい、そんな事を心の中で思ってしまう。
私ことアニーナ・ミドル・セレファーナは、この家の使用人……………つまりメイドをしている。
そして、そんな私が仕える相手はこのアンディード帝国の皇帝陛下、リード・フォン・ドミリア・スミス・アンディード様。
皇族だからか名前が以上に長く感じてしまうのはさておき、この国は圧倒的な武力を誇り、今の陛下が王座についた頃辺りから領土が異常に拡大したらしい。
それも、陛下の行う政治にあると言われており家臣からも民からも評価は高かったという。