暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】



「新しいお妃様だったりして…………(笑)」


「お妃様………?」


冗談っぽく笑いながら言っているが、冗談に聞こえないところがまた怖い。


「うん!お妃様がいなくなった途端、陛下のところへお見合いが殺到したのだそうよ。そりゃみんな妃の座につきたくて、必死よ」


「へぇ………」



一瞬だけあの時みた夢を思い出してしまった。


陛下の隣に女の人がいて、幸せそうに陛下と話をしているの。


それを私が使用人の立場で見てた、そんな夢。


まさにこの現場みたいに。


「お似合い………じゃないですか」


痛む心に知らん顔して、やっと発せた言葉は自分が思ったよりも苦しそうだった。


まるで首を締められたような声。


「まぁ、確かに貴族の娘かどっかの姫か何かでしょ?家柄的には釣り合ってるよねぇ〜」


「………………そうですよね」


私は普通の家に生まれた娘だし、陛下に釣り合うような人ではない。


それに、

悲劇をこれ以上繰り返さないためにも終わらせたはずだった。


これでいい。


これでいいんだって言い聞かせた。


でも、何でだろう……?

やっぱり胸が痛いや。


胸が苦しい。



< 201 / 224 >

この作品をシェア

pagetop