暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
「新しいお妃様だったりして…………(笑)」
「お妃様………?」
冗談っぽく笑いながら言っているが、冗談に聞こえないところがまた怖い。
「うん!お妃様がいなくなった途端、陛下のところへお見合いが殺到したのだそうよ。そりゃみんな妃の座につきたくて、必死よ」
「へぇ………」
一瞬だけあの時みた夢を思い出してしまった。
陛下の隣に女の人がいて、幸せそうに陛下と話をしているの。
それを私が使用人の立場で見てた、そんな夢。
まさにこの現場みたいに。
「お似合い………じゃないですか」
痛む心に知らん顔して、やっと発せた言葉は自分が思ったよりも苦しそうだった。
まるで首を締められたような声。
「まぁ、確かに貴族の娘かどっかの姫か何かでしょ?家柄的には釣り合ってるよねぇ〜」
「………………そうですよね」
私は普通の家に生まれた娘だし、陛下に釣り合うような人ではない。
それに、
悲劇をこれ以上繰り返さないためにも終わらせたはずだった。
これでいい。
これでいいんだって言い聞かせた。
でも、何でだろう……?
やっぱり胸が痛いや。
胸が苦しい。