暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
そこには具合を悪くしたのか倒れた使用人の女と、先程の声を発した使用人の女がいた。
「最近ずっと悪そうだったから心配してたけど…………まさかここまで悪かったなんて……。早く誰かに知らせないと……」
その女は焦った様子で、倒れた使用人の女をよく見てみれば、あの時コーヒーを持ってきた女であった。
金髪の髪に分厚い眼鏡。
しかし、倒れた衝撃かその眼鏡は今いる廊下の少し先の方に飛ばされていた。
「どうしたのだ?」
「え?…………へ、陛下っ!!!!??」
声をかけると女は妖怪でも見たかのように目を見開いて驚きつつも、状況を話す。
「あ………えっと………最近ずっと具合が悪そうだったんですけど……倒れてしまって……」
「………そうか。他の者をここへ向かわすゆえ医務室へ運ぶように」
「分かりました…!」
立ったままその倒れた女をもう一度見る。
髪に隠れて顔が見えない。
何故なのか隠れた顔が無性に気になり、そっと手を触れて髪を退けてみると、
そこには透き通る肌をした、
見た事のある顔があった。