暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
「………………おかしい」
初めて見るはずなのに、ずっと近くにいたかのような感覚。
この顔に見覚えがあるのだが、どこで見たのか全然分からず、
ただその場で固まった。
「どうかされたのですか?」
「……………いや」
金色で三つ編みにされた髪が不思議に思う。
「この女…………」
「も、もしや知ってらっしゃるのですか?陛下にコーヒーを淹れているのが、アニーナだと言うことを……っ!?」
まだ少ししか口を開いていないのに、ベラベラと話始めるこの女。
そんな事よりも、
「コーヒーを淹れているのはこの女なのか?」
「え、この話ではなかったのですか!?」
女は口が滑ったかのような顔をしたが、もう遅い。
「お菓子もこやつが?」
「…………はい」
恐れを知らずお菓子を添えてくる者とは、この倒れている女だったのか……。