暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】



眼鏡を拾いその女にかけようとしゃがみこんだ時、


女の金色の髪の中から、一本だけ変なものが見えた。



「……………黒い」


それは黒い髪であり、なぜ金色の髪からこのような髪が混ざっているのか、実に不可解な出来事で、


かけようとしていた手が止まる。



黒髪と言えばアニだが…………………アニは余の前から姿を消したし、ここに居るとも思えない。


使用人には興味がないと言っていた。


しかし…………………この髪は。


______サラッ。


三つ編みを解き、金色の髪に手で触れてみる。


触った感じ、この金髪が偽物のようにも見えないが、軽く引っ張ってみると


____スルリ……。


先程にはなかったものが現れた。


「………………どうなっているのだ」


この事実に困惑せざる得ない。


「なぜここに居るのだ。そして、なぜこのような格好で……………」


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