暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
結局私が元メイドで現お妃だという話は宮殿中に知れ渡り、もちろん貴族や官僚などは影でコソコソ言っているようだったが、
陛下の『文句があるものは直々に申しに来てみよ。相手になるぞ』との、少し黒い殺気のようなものを前に、
言うのをやめたようだ。
「アニーナ」
廊下で向かいから歩いてくる陛下とばったり会った。
「陛下!執務室へお向かいなのですか?」
「いや、妃の顔を見に来たのだ。疲れたときには妃に会うのが一番よい疲労回復法だ」
サラッと恥ずかしいことをいう陛下。
思わず顔が赤くなる。
「何だ?すぐに恥ずかしくなるなどまだまだだな(笑)」
意地悪そうに笑う陛下はまた新鮮だ。
「もう……………陛下ったら」
「怒るでない。冗談だ」
私がまさか陛下とこんな関係になるとは思っても見なかった。
私はアニーナ。
身分はメイド。
そして、
「どうした我が妃よ」
陛下のお妃。
皆はこう言う。
唯一、暴君陛下が愛したメイドだと____。
*fini……*