暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
しかし完璧な人間こそ欠点は付きもので、陛下には人間としての心がないと宮殿では噂になっていた。
自分にとって要らないものは容赦なく捻り潰し、国さえも目障りならば攻め落とす。宮殿で働く誰もが彼を怒らせないようにと細心の注意を払う毎日。
生きづらさを感じないわけがない。
でも、私がこうして命がけで働くのにも訳があり、他の皆も各自それぞれの理由を持ってこの宮殿で働いているのだ。
例えば、多額の借金を返さなくてはならない者や家が貧乏で家族の為に働かざるを得なかった者。宮殿を出入りする貴族と近づくために働く者もいるし、単に陛下の為に何かしたくて働く者も中にはいる。
まぁほとんどのメイド達はそれとはまた違う理由で、この宮殿に入ったらしいけれど………………………。
陛下は容姿端麗で25歳とまだ若い。その上この国では圧倒的な権力を持った男だ。正妃どころか側室の妃さえもいない状態に、メイドたちや他国の姫や貴族の娘さえも陛下に気に入られようと容姿に気をつけ努力をしている次第。
例え立場は主に雇われたメイドでも、陛下の目に止まれば側室入りというケースも珍しくはないらしい。