暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
「アニーナはもう少し容姿に気をつけたらどうなの?そんな見た目じゃ城下町の男でさえ、呆れられるわよ」
私の体を上から下までなめ回すように見たアイルさんは、ため息まじりにそんな事を呟く。
それは私の容姿があまりにも酷いからだ。
肩下までしかない金髪を三つ編みにした髪型に、青色の瞳を覆い隠すような丸く厚みのあるメガネ。
見るからに地味なメイドだ。
「いえ、私は容姿などに興味ありませんから……」
正直目立ちたくないからこのような格好をしており、私は宮殿の中でただひっそりと生きれればそれでいいのだ。
_____カチャ……。
金彩がたっぷり施された華やかさなコーヒーカップに砂糖も何も入れないコーヒーを煎れ終わると、甘さ控えめのバタークッキーと一緒に木製の丸いトレーの上にのせて、近くにいる人に手渡す。
「これを陛下の元へお願いできますか?恐らく今の時間は会議を終了させ、休憩をなさるために執務室にいられるはずだから」
興味のない私が陛下の元へ行くよりも、行きたい人に任せた方が、その時間を違うことに使えてより有効的だし。
「貴女っていつも陛下のとこに他の人を行かせるわよね~。私達は選ばれしメイドなのよ?その立場利用しなくてどうすんのよ」
主に仕えるメイドであっても、部署によって各自それぞれの仕事が振られてある為、陛下に近寄れるのは極一部のメイドだけ。
それが私の所属する『側近部』であり、そこで働くメイドは『側近メイド』と言われ、陛下に一番近い存在だとされている。
その為、毎年春に新しく宮殿入りするメイドたちの多くは、この部署を希望するのだ。
………………しかし願い叶わず、他の部署に配置されるのがその子達のオチである。