暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
「……………料理は口に合うか?」
「え?」
重い沈黙を破ったのは思いの外陛下だった。
「宮殿の食事は初めてであろう。向こうでは食べることの出来ない物ばかりだ。口に合うかどうかふと気になったのだ」
一応宮殿から出される食事は取っているけれど………………。
「食べたことの無い物ばかりですが、とても美味しいです。しかし、豪華すぎるせいか少し食べづらいようです……」
決して裕福な家系では無かったもので、このような食事をしている事に少しだけ後ろめたさを感じてしまう。
(私だけ贅沢をしてしまっているんじゃないかってね……………)
この国は栄えているから飢えることはないが、やはり身分と貧困の差は存在する。
贅沢をする者がいれば、生活を切り詰めて生活をする者もいる。
いくら職があろうと、給料が低ければ生活できない。
そんな世界だ。
だから皆は、良い大学を出て良い職に就くために頑張る。
金のある家しか学校に通えない。
そうして、再び貧困の差は溝を深めていく。
官僚達だってそうだ。皆良い家柄の坊っちゃんばかり。
そうして貧民を知らずに、国が出来上がる。