暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
この国には珍しい黒々とした髪の毛に、どこか強い芯のある大きな目。
人身売買の件で訪れた町で偶然出会った娘だが、面白い事を言う女だと思って連れてきた。
「あの女をどうするつもりなのか?妃にでもする気なのか?」
「………そこまでは考えていない。ただ良い暇つぶしになりそうではないか。気にくわなければ殺せば良い。飽きたら元の町へ返す。ただそれだけだ」
フッ………と笑うその顔は少しだけ悪い顔をしていた。
「悪いお方だな……………そんなんじゃ呪われるぞ?」
その顔に流石の宰相も苦笑した。
「別に構わん。それより、お前が来たのは何かを報告するためではないのか?」
「あ、そうだ。明日は他国の商人が外交に訪れるそうだ」
「どこの奴だ?」
「レイディーナ家だ。他国でも名を轟かせる家具メーカーの一つで、実際王族の家具も作っているそうだ」
この宮殿の家具は他の物に作らせているが、レイディーナ家も外せない名家の一つ。
家具だけでなく東の王族との関わりもある人物で、東を侵略するのであれば取り入れるべきだとは思うが……。
「明日来るのだな?」
「あぁ」
「では、念の為空の客室を設けよ。来たらまずそこへ通し待機させよ」
「泊まらなくともか?」
「あぁ。どうせ向こうも余に取り入る為何かしら荷物を持ってくるのだろう。まずはその客室で準備させておけば良い。その後、談話室へ通せ」
「かしこまりました。陛下」
そう言うと宰相は手配に当たる為、執務室から出て行った______。