暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
床掃除へと差し掛かったとき、赤色の絨毯に何やらシミらしきものを発見した私はそれがすぐに何なのかは分からなかった。
____ガチャ。
絨毯のシミ落としをしていると、ドアの開く音と同時に1人の男性が中へ入ってきた。
「掃除かい?助かるねぇ~」
その男性は黒ひげの生やした体格の良い方で、宮殿で官僚たちに指定している服装を身につけていたところをみると、この国の官僚だということが、直ぐに見て分かった。
「ところでここに置き忘れていたはずの資料はどこだね?」
「こちらでございます」
机の上に置き忘れてあった資料は、掃除の邪魔にならないようにと、あらかじめ別のところへ避けておいたのを男性に手渡した。
「あぁ、ありがとう。……………………ん?」
それを受け取ると男性は満足げな顔して資料に目を通していたが、すぐにその視線は別のとこへと向けられた。
それは、シミを落とす途中の赤色の絨毯だった。
「どうかなされましたか?」
「それ落とすの大変だろう?」
何かこのシミにまつわる事情を知っているのか、男性の言葉は少し意味深であった。