暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】



「先程から落とそうと努力はしているのですが…………………………悪化する一方でこの通り苦戦しております」


「それは血痕だから中々落ちないんだよ。最初の方ならまだ水洗いなどで落ちやすいが、一方で時間が経つと血液のタンパク質が化学反応で硬化し、どんどん落ちにくくなっていくそうだ」


(け、血痕……………………っ!!??)


なぜこのような場所にそんな物騒なものが付いていたのか気になったが、それよりもこの男性の博識に驚かされた。


この国は確かに化学が発達しているが、血液中を調べるなどの化学はこの国ではまだ発達途中の段階。しかし、この男性は血液中の成分を知り、それにまつわる根拠も兼ね備えていた。


一体、どこでそんな情報を知り得たのか…………………とても不思議な方だ。


「そのシミは洗濯部の方に任せた方が良さそうだ。君は他の仕事にあたりなさい」


「かしこまりました」


軽くお辞儀をすると、その男性は満足げに部屋から出て行った。


(先程の話が本当ならば尚更シミを悪化させるだけだ……)


絨毯以外の掃除は終わっていた為、私は使っていた道具を片付けると次の仕事へと移った。


< 7 / 224 >

この作品をシェア

pagetop