暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
冷徹で横暴な人だと、何と無く勝手に思ってたけど、もしやそうでもないのかな……?
「取りあえず、ありがとうございます。陛下が来てくださっていなければ、今頃どうなっていたか……」
人を直ぐ殺すのは気に食わないが、それでも今こうして何度も助かっているのはそのお陰でもある。
そんな何とも複雑な気持ちを心の片隅で抱きつつ、陛下に深く頭を下げた。
「…………別に良い。今は部屋へ戻れ」
陛下は相変わらず冷めたような口調でそう言うと、マントを翻(ひるが)して兵士と共にその場を去っていった。
優しいのか優しくないのか、本当に分からない方だ…………。