暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
「アニ様!!」
「少し目を離した隙に違うとこにいらっしゃるんですから……………」
部屋に戻ると案の定使用人達は困った表情で私を見てきた。
適当に仕事をふれば、皆持ち場について簡単に時間の確保が出来ると知ってからは、
たまにこうやって抜け出している。
バレないように戻ってきてるはずなのだが、感が鋭いのか、使用人達には直ぐに私を見つけてしまう。
「少し息抜きに部屋から出てたの」
「どこか行かれる際には必ずお声をかけてくださいませ!」
「またあのような事が起こったら大変です!アニ様は陛下の"特別な"客人様ですよ!?」
あの事件が起きて以来、宮殿で働く使用人の目つきや態度がガラッと変わり、
官僚までもが私に頭を下げるようになった。
あの日。陛下が私を助けた事が宮殿中に知れ渡ったのがきっかけで、陛下を動かした私は何かしら特別な存在ではないのか……と、周りが勘違いしたみたい。
全然そんなんじゃないのに。