暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】



「その……………"特別な"ってやめない?」




「何言ってるんですか!!今この宮殿で陛下がお助けになる方なんて、恐らくアニ様ぐらいですよ!!」


「それにリリアンが出掛けているので言いますが、今この宮殿でアニ様はどの者よりも陛下に近い存在です。親しい事からいずれは妃になるのではないかと宮殿内では噂されております」



特別な存在でなければ親しい関係でもないのに、噂だけが勝手に大きくなって広がっていく。



仮に陛下がこの噂を聞いたのなら、きっと「皆の思い過ごしだ」との言葉で済ましてしまわれるのだろう。


「………それより、リリアンはどこに行ったの?」


先程ダリアがリリアンが出掛けていると会話中で言っていた。確かにこの部屋に、いつもならいるはずのリリアンの姿がいない事に不自然さを覚えていたが…………………一体どこへ行ったのだろう?



何かしら用事があれば、仕えている主に一言声をかけるのが使用人の中では暗黙のルールではなっているのだが…………。


「リリアンなら急に私用が出来まして、只今宮殿の外に出掛けています。……………………もしや、あの子連絡されておりませんでしたか……?」


「えぇ。何も聞いていないわ」


私がそう返事を返すとサニーはヤバいと青ざめた表情をした。


「……た、大変申し訳ございませんでした!!!リリアンはまだ幼いがゆえ少し抜けてる部分もございまして………………どうか罰ならばこの私に!!」

使用人でもそうだし、そかの職業でもそうだが、必ず下についている以上は『報告・連絡・相談』は守って欲しいもの。


今回私だったから良かったが、過去にその3つのどれかを怠った者が、客人の怒りを買い宮殿追放された事例もある。


その為表では言わないが、それが暗黙のルールと化した。


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