暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
騙しているようで少し心苦しいが、私はただの使用人がゆえ、そのように罰することが出来なければ、そもそも罰する気もない。
「今度から気をつけてくれればいいのよ」
頭を下げるサニーに優しく声をかけると、「アニ様は何てお心が広いのですか………っ!感謝致します」と頭を上げて欲しかったのに、再び頭を下げられる自体となってしまった。
それはまぁ良いとして…………………
「サニー。少し図書館まで付き合ってくれない?読みたい本があるの」
使用人の頃は時間が空いた頃によく足を運んでいたが、最近中々忙しくて行けていないことを思い出した。
色んな本が置いてあるから、あそこは良い勉強になるんだよね!
軽く身なりを整えて部屋の外へ出た私は、言われた通りしっかりと使用人を引き連れた。
図書館へ向かう途中の長い廊下は静かなもので、その沈黙に耐えかねたのか使用人アンナが口を開いた。
「アニ様は特別を嫌っていらっしゃるご様子ですが、それはなぜなのですか?リリアンのように近づきたくても、近づけない者も多いといるのに………」
「アンナ!アニ様にそのような質問をするとは失礼です!」
アンナのそんな質問に、サニーが口を挟む。
「し、失礼致しました………ただ疑問でございまして。今後、このような言動には十分気をつけます……」
サニーはアンナとダリア、そしてリアンナより先輩なのか3人の事を呼び捨てにし、周りもよく把握してるうえ、それに伴って適切に指示をしたり、いけない事にはきちんと叱っている。
確かにさっきの質問は少し驚いたが、別に話せないほどではない。
「大丈夫よ。先程の質問だけど確かに私は特別が嫌い。というか、それに溺れたくないの。周りが特別だと言っても、陛下にとって私が特別だとは限らないから」
「そんなことありません………!陛下はどうでも良い人にあのような事は決してなさいません!!」
「………それはどうでしょうか」
確かにあの陛下はどうでも良い人を助けたりはしない。
だけどそれがもし、所有物だから殺されたくなかったとしたら?
暇つぶしの道具として、助けたのなら?
飽きたらどうなるのかも分からない。
殺されるかもしれないし、一生道具かもしれない。
………………………それなら使用人として、上の人に跪き仕えてた方が何倍も気楽だった。