暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】
そんな一連の話を先程から黙って聞いていたファン宰相は、呆れ混じりに言葉を発した。
「………………それはお前がいつも殺気立ってるから皆が恐れるのだ。巷では恋をすれば人は変わると聞くが、妻でも娶ってみたらどうだ?正妃どこから妃さえもいないだろう」
正妃に関することはこの国にとって重要な話でもあるが、逆に国を掻き乱す原因にもなりかねない。
そもそも、そのような話をこの場で言ってみても陛下にそんな気がないことは、言う前から分かっている事だった。
以前に他国訪問の為この宮殿へ訪れた貴族の男が、娘を嫁にと写真を持ってきてまでして話を持ちかけたが、リードは『必要ない』の一言で片付けたのだとか……………………。
その貴族の男には少し可哀想にも思えてくるが、しかしこの話は今に始まった事ではなく、他国の姫でさえ同じ扱いをされている。
例え相手がこの国に有利のある姫であれ、周りを圧倒するような美しい貴族の娘であれ、この男は中々他者に心は開かない。
そうでなければ生き残れないと、幼い頃の記憶にて分かってしまったからであろう。
この国は圧倒的な武力を誇り各国への領土拡大を広げているが、それにはこの男が血に染まった王であったからという理由もあるのではないかと宰相ながら思ったのであった_______。