白き桜と黒き神
「…桜雨?準備終わった?」


コンコンと遠慮がちにされたノックの後に聞こえた声に返事をする


『終わったよ。すぐ行く。』


覗き込んでいた鏡から視線を逸らし、スクールバッグを肩にかけて扉を開けると


寸分の隙もなく制服を着こなした怜治が立っている


『うーん…相変わらず、怜治はかっこいいね…』


レイジはその言葉に怜悧な美貌を緩ませ無邪気な笑顔を私に向けた


「そうかな?桜雨にそう言われると嬉しいよ」


怜治ははっきり言ってモテる。


研ぎ澄まされたナイフのように洗練された美貌


運動も勉強も出来るし人望も厚い。


モテない方がおかしいんだけど。


人は怜治を見て完璧だって言う。


だけど、そんなのは嘘であってホントではない。


怜治は完璧なんかじゃない。


色々と欠落している。


実際に、外見とは裏腹に中身はほわほわしててふわふわでふよよーってしてる。


ごめん。擬音語多くてわかんないか。


つまるところ、子供みたいに無邪気で天然無自覚で抜けてる


学校の奴らはそれすら知らないのに怜治を完璧だって囃し立てる


怜治はそれを心の底から嫌ってる。


“自分”を見てくれない人間が大嫌いなんだ。
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