彼は私の全てだった
私たちはそれぞれの部屋に帰った。

私はシュウのキスの意味をずっと考えてる。

あれは多分ただの衝動だ。

高校生のあの時の感傷に浸った衝動…

キラキラしてたあの頃のシュウが
今のシュウにとってもいい想い出なのかもしれない。

あの時、いつもニコニコしていたシュウが
あんなに無口で感じ悪く変わるなんて
一体何が起こったのだろう?

考えれば考えるほど答えは出なくなる。

シャワーを浴びてバスルームを出ると
インターフォンが鳴った。

こんな時間にインターフォンが鳴るのは少し怖い。

恐る恐るカメラを見ると
驚くことにドアの前にはシュウが立っていた。

ドアを開けるとシュウは私を睨んで言った。

「意味なんてねぇから。

あんなにキスに意味なんか全然ねぇから。」

その時のシュウがあまりに哀しそうで
助けを求めに来たみたいで
私は思わずシュウの手を取って部屋に入れて抱きしめた。

シュウも力を入れて私をギュッと抱きしめる。

あとは夢中で抱き合った。

朝起きたらシュウは私のベッドに居て
昔と同じ顔で眠っていた。

私はシュウの髪を撫で
シュウは私の体を抱き寄せた。

幸せだった。

あの時の時間が戻ったみたいで…

でもシュウはそんなに簡単じゃなかった。

私を抱きしめてシュウはこう言った。

「お前って案外簡単にヤラセてくれんだな。

これからも頼むよ。」

私はショックでシュウから離れようとした。

シュウはそんな私を押さえつけて
また私の中に入った。

「ミチル…すげぇ気持ちいいよ…

なぁ、昨夜みたいにエッチな声出してよ。」

シュウはまるで私を物みたいに扱って
自分の欲だけを私の身体で満たしてくみたいだった。

昨日とはまるで違う。

昨日の私たちの間には絶対に愛があった。

今は…まるで憎んでるみたいに
私をただ傷つけようとしてる。

そんなシュウが痛々しくて
私はシュウの為に声を出した。

気持ちよくはなかったけど…
そういうフリをした。

涙が自然と流れた。

泣いてる私を見て
シュウは私を抱きしめた。

「ミチル…忘れさせてよ。」

そう言ってシュウは私の涙を拭いながら
私の上で動いた。

私は黙ってシュウにされるがままそこに居た。

馬鹿みたいだけど…
シュウがそれほど酷いヤツだとは思えなかった。

シュウは何かに傷ついて、きっと苦しんでる。

だから私はシュウを黙って受け入れた。

私はシュウを忘れられない。

あれからずっと一日だってシュウを忘れた日は無かった。








< 15 / 71 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop