彼は私の全てだった
「何?何があったの?」

私がシュウに聞くとシュウは笑いながら

「アイツはやっぱダメだな。」

と言った。

「彩未に何したの?」

「俺が何かしたんじゃなくて
アイツがやったんだよ。」

「何を?」

怖かった。

シュウは本当に悪魔なのかもしれない。

「中村、飛ばされるぞ。

いや、退職させられるかも。」

私はその事を聞いて中村さんが心配になった。

部屋を出て中村さんに逢いに行こうと思ったが
それをシュウに遮られた。

「中村が心配?

お前がそんな態度をとるから
アイツは飛ばされるんだよ。

もう出世なんて出来ないだろうな?

もしかしたら耐えられなくて辞めてくかも。」

「中村さんに何したの?」

嫌な予感が頭をよぎる。

「俺じゃないよ。

彩未に聞いてみろよ。

中村は最低なヤツだってわかるから。」

私はシュウとやり直したいと思ったことを後悔した。

シュウの心の中にもう昔のシュウなんか居ない。

私はシュウの腕を振りほどいて中村さんのところに行かなければと思った。

シュウは私の手を離さず
私を押さえつけてキスしようとした。

「お前は俺のモノだろ?

オレのためなら何だってするんだろ?」

私はシュウの足を思い切り踏んで
シュウが痛がってる隙にシュウの腕をスルリと抜けて
思い切り走った。

「イッテェ…おい!ミチル!

行ったら終わりだぞ?」

その声は私に届かなかった。

中村さんが私のせいで酷い目にあったらと思うと
申し訳なくて、悲しくて、悔しくて
どうしたらいいかわからない。

私は中村さんの部屋までとりあえず走った。

部屋を訪ねると
中村さんは不思議そうな顔をして聞いた。

「こんな時間にどうしたの?」

「あ、あの…瀬戸さんに何かされたんですか?」

中村さんは私に部屋に入るように言った。

「とりあえず中、入って。」

中村さんは落ち込んでる風でも、
悲しんでる風でもなくて
いつもと変わらなくて私は何だか拍子抜けした感じだった。

でもそれは私を心配させないためで
中村さんにはこの時、既に大変な事が起きていた。
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