彼は私の全てだった
彩未の部屋に行くと彩未はかなり狼狽えていた。

「何?こんなに遅く。」

そして酷く疲れて見えた。

泣いていたのか目は真っ赤で瞼が腫れている。

「小泉さんに何言われたの?」

問い詰めると目も合わせずに

「何のこと?」

と強がっている。

「中村地区長をハメたのは
小泉さんに言われたからでしょ?」

「柿沢さんには関係ないでしょ?」

泣きそうな顔をして彩未は私を睨みつけた。

そして中村さんの事ではなく
最も聞きたかったであろう事を私に聞いてきた。

「柿沢さん、シュウちゃんとどんな関係?

私とシュウちゃんが付き合ってるの知ってたよね?」

「今はそんな話してない。

中村さんにどうしてあんな事したの?

地区長はそんな事する人じゃないでしょ?」

私はものすごく腹が立って
声を荒げて言ったが
彩未はその質問には全く答えずに
もう一度同じことを聞く。

「シュウちゃんが急に私と距離置こうって言ったの。

柿沢さんのが良いからって。

何が?どこが良いの?って聞いたら

sexって言った。

一体シュウちゃんとどんな関係なの?

柿沢さん、シュウちゃんと付き合ってるの?」

彩未は泣きながら縋るように私の腕を掴んで身体を揺らした。

私は本当の事を言えなかった。

私とシュウは身体だけとは言いたくなかった。

「シュウは私とも付き合ってる。

私たちシュウに二股かけられてるの!」

「シュウちゃんは私とはHしてくれない。」

意外だった。

シュウは彩未には手を出してなかった。

彩未の事が大切なんだろうとも思ったが
今の彩未を見るととても大切にされてるとは思えなかった。

その場に座り込んで大きな声で泣いてる彩未がなんだか可哀想に思えた。

身体だけでも愛されてる私の方がマシなのだろうか?

「中村さんを陥れたのはシュウに言われたから?」

彩未が頷いて言った。

「シュウが言ったの。

地区長が視野に入るだけで気分悪いって。

アイツが居なくなればいいって。

それで…私に言ったの。

お前がアイツを何とかしてくれないか?って。

何とかしてくれたら…私と」

シュウは悪魔だ。

彩未はシュウと悪魔の契約を結んでしまったのだ。



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