彼は私の全てだった
突然参加したにもかかわらず、
昔の友達に会うとすっかり昔に戻って
懐かしい話で盛り上がった。

「なんかミチル、綺麗になったよね?

やっぱ東京は違うんだー。」

「え?東京じゃないよ。千葉だから。」

「千葉ってディズニーランドとかあるとこでしょ?」

「ま、まあ。

そことはそんなに近く無いんだけどね。

東京寄りじゃないし…」

土地勘のない友達からしたら、
私の住んでる場所も関東ってだけで都会に思えるようだ。

周りの風景はこの地元の周りと大して変わりはない。

ただここより都心に近いだけだった。

「柿沢ってS高だったよな?」

「あ、うん。

北川くんもS高だったよね?」

突然声をかけてきた北川真一も同じ中学からS高に入った1人だった。

北川くんとは中学の頃は同じクラスだったが
ほとんど話した事はなく
高校に入ると一度も同じクラスにはならず
すれ違っても挨拶すらしない間柄だった。

ただ顔と名前と同じ中学だったという記憶と
シュウと同じサッカー部で
3年の頃にはサッカー部の部長になったという事くらいしか知らない。

「そういえば覚えてる?

小泉柊…確か一年の頃お前たち付き合ってたろ?」

ここに来て中学の同窓会で柊の名前を聞くとは思っても見なかった。

「え?小泉柊?

今…偶然にも同じ職場なんだけど…」

「え?そうなの?

…そっか…アイツまともに生きてんだな。」

まともではないが生きてはいる。

「もしかして…北川くん、シュウのこと何か知ってるの?」

北川真一は話しにくそうに頷いて私に聞いた。

「柿沢は…聞いたことないの?

アイツの母親のこと。」

やっと柊のことを知ってる人に出会えた気がした。



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