彼は私の全てだった
次の日、父の顔を見て私は千葉に戻った。

帰りに地元の名産品のお菓子を持って店に挨拶に行った。

「お休みいただいて有難うございました。

小泉さん、シフト代わってくれてありがとう。」

シュウは軽く会釈をして私の顔を見ていた。

「お父さんどうだった？」

マネージャーは一昨年お父さんを亡くしたばかりで
私の父の事をとても心配してくれていた。

親を亡くした人には親を亡くした人にしかわからない親への想いがあるようだ。

親の死に対して誰しもそれぞれの後悔があり、
そしていい思い出といくつかの言葉が今でも胸に残っているとマネージャーが前に言っていた。

「父は手術も終わってて、元気そうでした。

もうちょっとしたら退院できると思います。」

「そうか。よかったな。」

マネージャーは自分のことのように喜んでくれた。

私が報告を終えて帰ろうとするとシュウが後ろから私の肩を叩いた。

「俺ももう上がりだから少し待ってて。」

シュウが終わるのを待って二人で店を出た。

「シュウ、お腹空いてない？

私、昼ご飯ね、電車でサンドイッチ食べただけでお腹空いてるんだ。

どこかで一緒に食事しない？」

断られると思ったけどシュウは意外にも

「うん。」

と頷いた。

「何か食べたいものある？」

「お前の好きな物でいいよ。」

何だか今日はいつもより優しくて
私は少し揺らいだ。

北川真一から聞いた話をシュウは受け止めてくれるだろうか？

私は話すべきがこのまま胸にしまっておくべきかあの話を聞いてからずっと悩んでいた。








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