彼は私の全てだった
その後の研修でシュウを見かけても声をかけたりはしなかった。

シュウもシュウで話しかけても来ない。

研修が終わるとみんなそれぞれの店舗に振り分けられる。

色々な地方に別れ、シュウとはここで離れると思っていた。

しかし、予想外にも私とシュウは千葉に出来る新規店舗に行かされることになった。

最低でも2年は同じ店舗で働くことになる。

新規店舗には3人、新入社員が行くことになって
その中の1人がシュウだった。

私たちは会社で用意されたワンルームマンションに引っ越し、そこから店に通う事になる。

「マネージャーの松下です。
この店はまだオープンは先ですが
オープンに向けてやってもらうことが沢山ありますので
3人で協力しなら頑張ってください。」

マネージャーの松下さんは25歳くらいの人で
入社してまだ3年しか経ってない。

私たちも3年したらだいたいがマネージャーになる。

入ってみてわかったのだが、ここの会社はやめる人がとても多かった。

3年居てマネージャーになる人は入社した人数の3分の1にも満たなかった。

接客が好きな人じゃなければ勤まらないし、
側から見たら大学まで出て、バイトと変わらない配膳の仕事に見える。

しかし実は社員としての雑用もかなりあり、
土日祭日はほとんど休めず、
出勤時間もバラバラで残業も多かった。

本社に入って働けるのはある程度の経験を積んで
それなりの結果を出した一部の人だけだった。

新入社員のほとんどはこの店舗経験の間に辞めて行く。

私は大学生の時にファミリーレストラン系の店でアルバイトした経験があり、
人と接する仕事がしたいと思って入社したが、
社員になれば接客以外の雑務もあり、
思っていたよりずっと厳しく、
毎日が目まぐるしく過ぎ、連休もなかなか取れずに
地元に帰って友達と会ったりする気力も時間もなかった。

もちろんそんな環境の仕事はたくさんある。

サービス業で土日休みが少ないのはどこも同じだ。

会社としては管理もしっかりしてるし、
休みも規定通りにある。

ただ知らない土地で孤独な日々が続いて、ホームシックにかかったり、
緊張した中で日々を過ごして最初の3ヶ月は精神的にも肉体的にも辛かった。

仕事で失敗して逃げ出してしまいたいと思う日もあった。

それでも時が経つと少しずつマネージャーやパートさん達と仲良くなってこの環境にも慣れて来た。

それでも私とシュウとの距離が縮むことはなかった。

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