仁科くん、君ってやつは
私の前でしゃがんで、そう呟いた仁科くんの肩をドンと強く押す。
「酒井くんのところに行って、傷ついて、泣くのは、望月さんだよ」
意味が、分からないよ。仁科くん。
3月14日、日曜日。
13時、学校の最寄り駅の時計台の下。
精一杯のオシャレをした。"可愛い"って言ってくれるかなって、ドキドキした。
……でも。
待ち合わせ時間も場所も、間違ってはいなかったはずなのに。
酒井くんはその日、現れることはなかった。