仁科くん、君ってやつは
好
「酒井くん!見てこれ、酒井くんだけ変な顔してるの」
「うわ、何これ、いつの間に撮ってたの?」
教室の真ん中で楽しそうにはしゃぐ男女のグループの中に、酒井くんもいた。
3月14日、ホワイトデー。
その日は、クラスのみんなが自由参加できるカラオケパーティーをしたんだとか。
教科書を机の中にしまって、あの時の言葉を思い出す。
『14日って、日曜だろ?俺ちょうど部活ないし、良かったら出かけない?』
これは、そのカラオケパーティーに私を誘ったってこと、だったのかな。
それを、私は、勝手に勘違いして……。
「望月」
聞き慣れた声に、ビクッと肩が上がった。
私と目があった酒井くんはニコッと笑いかける。