仁科くん、君ってやつは
両手の甲で、目元を隠す。
ジワジワと涙がたまってきた時、
「そんな格好してたらパンツ見えちゃうよ」
仁科くんの声がした。
あぁ、もう。なんてタイミングの悪い……。
目元を隠したまま、口を開く。
「仁科くん、今私は君に構ってる余裕はないんだけど」
「別に構ってもらいたくて来たわけじゃないよ」
「……あっそう」
よくよく思い出してみれば、私はこの人にキスをされたんだった。
……思い出すと腹が立ってくるけど、今はもう、そんなのどうでもいいや。
ふと、この前言われたことを頭の中に思い浮かべる。
『酒井くんのところに行って、傷ついて、泣くのは、望月さんだよ』