仁科くん、君ってやつは
そんなことを考えながら、着いた教室の扉を開けようとして、その手を止めた。
「何してんの?」
不思議そうに聞く仁科くんに、フルフルと首を振る。
今は、ちょっと開けられない。
だって、中から酒井くんと数人の男子の声が聞こえるから。
しかも、
「望月、結局泣かなかったなぁ!」
「な。ちょっとつまんねーの」
話の話題は私。
今の私に、この中に入って行く勇気はない。
「それにしても、酒井、お前もひっでぇこと言うのな」
「何だよ。お前らだって楽しんでただろ」
クスクスと笑う酒井くん。
私の知らない、酒井くん。