仁科くん、君ってやつは


「……クズ野郎」





吐き捨てるようにそう言って、

自分のと私のカバンを持って、私のところへと戻ってきた彼に、


キッと睨まれた。





……仁科くん。

さっきも思ったけど、キャラを被るの、やめちゃえばいいのに。


本当の自分を隠すの、やめなよ。




だって、君さ、本当は、王子様を演じなくたって優しい人でしょう。






「望月さんも、なんであんな奴好きになるわけ」


「えっ、」


「んっとに、腹立つ。アイツより、俺のが先に……」






何かを言いかけていたのに、「チッ」と舌打ちをした彼は、

私にカバンを渡して、そのまま行ってしまった。







< 29 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop