仁科くん、君ってやつは
「……クズ野郎」
吐き捨てるようにそう言って、
自分のと私のカバンを持って、私のところへと戻ってきた彼に、
キッと睨まれた。
……仁科くん。
さっきも思ったけど、キャラを被るの、やめちゃえばいいのに。
本当の自分を隠すの、やめなよ。
だって、君さ、本当は、王子様を演じなくたって優しい人でしょう。
「望月さんも、なんであんな奴好きになるわけ」
「えっ、」
「んっとに、腹立つ。アイツより、俺のが先に……」
何かを言いかけていたのに、「チッ」と舌打ちをした彼は、
私にカバンを渡して、そのまま行ってしまった。