仁科くん、君ってやつは
私の質問に、仁科くんはんー、と何かを考えている様子。
「バカでアホで、超頑固」
「何それ、全部悪口じゃん」
「……でも、可愛い」
優しい声音に、思わず後ろを振り向きそうになったけど、
慌ててグッと体に力を込める。
「俺じゃない他の奴のことを想ってる時の顔でさえ、可愛くて仕方なかった」
「……そう」
「強引に、俺のものにしてやろうかって、思った時もあったぐらい」
「それについてはノーコメント」
「ふ、だから俺が、」
カチカチ、と親指を使ってシャーペンの芯を出す。
最後に、"望月"と苗字を書いて、そのまま下の名前も書こうとした時。
「……俺ができるのは、その子がソイツのところに行かないように邪魔することぐらいで」